3 0 t h t i t l e : 「 勘 弁 し て く だ さ い 」
「勘弁してください」
アズラエルはまったく話にならない、とでも言いたげに短く笑った。
一体どこでこの男は、こうも人の神経を逆撫でする笑い方を身に付けたのだろう。
「一応冗談言える人間だったんですねぇ、キミも」
少しも面白くなかったけれど、とご丁寧に感想まで加えて、冗談を言ったつもりなどこれっぽちもないバジルールを笑う。
こういう物言いがどうしても気に食えないのだ。単純だ、と分かっていつつもバジルールの苛立ちは募る一方だった。
彼の持つ肩書きがいかに立派なものであるのか知ってはいる。
そのもとで悠然と指揮を揮うためにどれ程の覚悟が必要であるのかということをバジルールには知る由もないが、それでも並大抵のものではないのだろうというのも、想像はできていた。
しかしそれを、目の前で子供の様に残酷にニヤニヤとしているアズラエルと結びつけるのは無理なことだった。
至極楽しげに、アズラエルはわざとらしく溜息を吐いてみせる。
「あのねぇ、軍人さんなんでしょキミ。だったら分かってる筈と思うんだけど」
アズラエルの横目がバジルールを捉える。
彼の瞳が実際は何をどう映しているのか、バジルールは知らない。
「これは正真正銘ホンモノの戦争なんですよ。ごっこの積もりでいてくれちゃ困ります」
「そのようなつもりは」
「ですよね。じゃ、ちゃっちゃとお仕事お願いしますよ、艦長さん?」
バジルールはぐっと唇を結んだ。
ここでむきになったところで、どうしようもないのだ、とバジルールは自身に言い聞かせた。
口の達者な子供を相手にしている位の心構えでいなくては。
「あ、そうだ」
はた、とアズラエルが声を上げる。
新しい悪戯を思いついたかのようなはしゃいだ調子に、バジルールは意識せずに身構えていた。
「よかったら今日はお食事ご一緒しません?」
断ることなどできなかった。
5:16 2007/03/23
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