2 6 t h t i t l e : 「 い や 、 た ま に は い い な あ 、 と 思 っ て 」
「いや、たまにはいいなあ、と思って」
自然とほころんだ表情を訝しげに見られて、ガブモンは苦笑した。
「だってさ、久しぶりじゃない。こーやってヤマトと海来るの」
「そうだったか」
言われてみればそうかも知れない、とヤマトは思った。
バンドだバイトだ学校だで最近はあまりかまってやれていなかった。
「やだなー、そういう意味で言ったんじゃないよ、オレ」
ガブモンは気にする素振りも見せずに大きな目でヤマトを見上げる。
「オレはヤマトの側にいられればそれだけでうれしいし、忙しいってことはヤマトががんばってるってことだろ」
波をけりながら歩くパートナーはいつだってさらりと言葉をくれる。
ヤマトが感謝の気持ちを素直に口には出せないことももちろん知っているのだろうが。
「ヤマトはさー、好きだよね、海」
なにか悩み事があってゆううつになっているときは特に、とまではあえて言わないでおく。
「・・・別に好きって訳じゃない」
こういうときのヤマトの反応が素っ気ないのも決まっている。
「ふーん。じゃあさ、なんで好きじゃないのにいっつも海、来るの?」
今は冬だ。
海は真夏のようにきらきらとした青ではなく、灰色がかって波も荒い。
人っ子一人見当たらない淋しい浜辺はヤマトに似合っていなくもないが。
「さあな」
ヤマトの回答はやはり思い切り素っ気なかった。
ガブモンは波と遊びながら、ヤマトを伺う。
いつだってひとりでぜんぶ抱え込もうとする意地っ張りなところは出会ったときから変わっていない。
成長していない、とかじゃなく、それはヤマトの長所なんだとガブモンは思っている。
変わらないことがうれしいこともある。
「オレさ前に丈にきいたんだ。人間も進化してるんだ、って」
それは自分たちデジモンとは違って、とても長い時間がかかるものらしい。
「さいしょは海の中にちっちゃい生き物がいて、それがどんどん進化して、ヤマトたちになったんだって」
けれど見つけた進化というささいで大きな共通点に、ガブモンはなんだかうれしく思ったものだった。
「ヤマトはとくべつ純粋だから、きっとそういうときのこと思い出して、海に来たくなるんだよ」
ヤマトはなにも言わずにガブモンをじっと見て、それから黙って海を眺める。
ガブモンはいつものように根気強くヤマトの喋り出すのを待った。
10:05 2006/07/28
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