2 3 t h t i t l e : 「 ・ ・ ・ 最 悪 ・ ・ ・ 」





















「…最悪…」



腹の底から俺は呟いた。



昼間の忙しさとは打って変わり、人気のない司令部は殊更よく響いた。

机に突っ伏した俺の呟きはそのまま机上をすべり、真面目に仕事に取り組んでいる同僚にもしっかり届く。



「いつまでもグタついてないでとっとと片付けちまえ。お前と朝日拝む気は悪いが無いからな」



ブレダは書類から少しも目を離すことなく淡々と返した。

無二の親友が落ち込んで仕事どころではないというのに、冷たいことこの上ない。



「ブレダ、お前いつからそんな奴になっちまったんだ」

「残業付き合ってやってるだけでも感謝しろ」



とはいえ本当に付き合って残業しているというだけであって、奴が取り組んでいるのは自分の仕事である。

そりゃあ、一人ぽつんと取り残されるのよりはいくらか気が滅入らないかも知れないが、慰めのひとつも貰えないのであればいようがいまいが大して違いはない。



「・・・それ、期限まだ先なんだろ?ちょっとこっちのを手伝って・・・」

「やなこった」



最後まで言い終えないうちにきっぱりと一蹴される。



「手伝ってやるのは簡単だがそれじゃお前のためにならんだろ」



どこの優等生の理屈だ。

実際は単に面倒なだけだというのは端から承知している。



「はくじょーものー」



どうにか同情を買おうとこぶしで机をだんだん叩いてみたが、字が歪むと怒られて終わった。

しかたがないのでもう少しふて腐れていることにする。

安っぽい机と仲良くしながら目を閉じると浮かぶのは残業を告げた憎ったらしい上官の顔である。



君、これ明日までに頼むよ、え?今からじゃ無理?それでは仕方ないな、残業、お疲れ様。



肩に手を置いてさわやかにそう言い残し、彼は早々と帰宅していった。

俺がどれだけ必死で今夜の約束を取り付けたかも知らないで。

・・・・・・いや、もしかすると知っていたのかもしれない。

あの人は今夜のデートを知っていながらも尚、俺に残業を命じた。

最悪だ。

焔の錬金術師ロイ・マスタング、地位は大佐、眉目秀麗、博学多識、好きなものは自分、女、部下いじめ!

最悪だ、文字通り 最悪 だ。



今まで付き合った女性の大部分から言われ続けてきた言葉が脳裏をよぎる。



わたしと仕事、どっちが大切なの。



それが最後の言葉となった女性も少なくはない。

ここまではまあよしとしよう。いや決してよくはないがある程度仕方のないことだ。

出会いがあれば別れもある。自然の摂理というやつである。

しかし、しかしだ。

新しくできた彼氏がロイマスタング大佐というのはいったいどういうことか。

同じ職場で働いているというのにどうして俺がさようならであの人にはこんにちはなんだ。


世の中、どこかおかしい。



「・・・・・・・・・・・・ブレダ、」

「あ?」

「上がったら一杯付き合って」

「の前にコレ、終わるんだろうな?」



俺は改めて、机の上に山と詰まれた書類を見やる。

そして改めて哀しい気分で笑うのだった。





















1:13 2006/06/23






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ブレダ少尉以上にいい人なんているわけない。こういう日常書いてて楽しい。



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