2 0 t h t i t l e : 「 大 丈 夫 。 大 丈 夫 。 大 丈 夫 」





















「大丈夫。大丈夫。大丈夫」



有利は村田を真っ直ぐに見て繰り返した。

慌てて視線を逸らす。

ここは水をくぐり抜けた向こう側の世界ではないというのに。



「 やだなー、そんなに真面目に取るなよ渋谷」



茶化すように笑う村田ははやくこの話題を終わらせようと努めているようだった。



「違うだろ」



有利は逃げるように逸らされた友人の目をもう一度しっかりと見る。



「そんな曖昧にしていいことじゃないんだろ」



逸らすことでは逃れられないと察したのか、村田の視線は困惑したように宙を彷徨ってからゆっくりと伏せられた。

黒の一方が目蓋に隠されて見えなくなる。


同じ双黒を有する少年は、有利には自分の親友の村田健でしかなかった。

その事実は彼の魂がどれほどの記憶を蓄積していようが揺らぐことはない。

大昔の記憶のせいで親友と目を合わせることすら許されないのかと有利は歯痒かった。

おそらく村田は有利以上にもっと歯痒く思っているのだろう。



「村田、お前は村田健だろ?」

「ああそうだよ。だからもうこの話は 」



有利の問う意図が掴めずに、珍しく明らかに苛付いた様子で眼鏡を押し上げる村田に、有利は微笑んだ。



「だったら大丈夫だよ」



益々訳が解らないといった顔で村田は有利を見た。

有利は小さな子供に花の名前を教えて聞かせるようにていねいに言葉を続けてゆく。



「おれはお前が村田だって知ってる。

 これまでお前の魂が誰のものだったのか、おれはよく知らない。

 けど今、そいつを持ってるのはお前なんだろ?

 今おれの目の前にいるのは村田健なんだろ?」



有利はもう一度強く断言する。



「おれはお前が村田だって知ってる。 それだけじゃ、不十分かな 」



村田はどんな顔を見せていいのかわからないまま必死で言った。



「 いや」



笑顔のつもりだったが、声が震えてまるで泣いているようにもなった。



「十分だよ、渋谷」



そのこたえに有利は少しの曇りもなく笑った。



暗いところから急に外へ出たときのように村田はとても目がちかちかした。





















19:37 2006/02/21






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マを書くときっていつも三人称迷う。有利と村田だけど渋谷と村田のがよかったかな?それとも有利と健か? NO.4と最後びみょうにかぶる。



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