1 3 t h t i t l e : 「 さ せ る か っ ! 」
「させるかっ!」
何もない中空に狙いを定めて手を振り下ろすと、たしかにぱしんと手ごたえがあった。
「つまみ食い禁止って何度も言ってるじゃないスか、スマ!」
「バレなきゃ平気と思ったんだけどねェ〜」
独特の笑い声とともにアッシュの隣の空間が奇妙に歪む。
何もなかったはずのそこから徐々に姿を現したのはやはりスマイルだった。
「バレてもバレなくてもダメなものはダメっス!」
「ヒヒヒ、そぉーかもねぇー」
反省の色が全く見えない。
アッシュも半分あきらめてはいるのだが、スマイルのいたずらには困ったものである。
本当に自分よりも長く生きているのだろうかと時々疑わしく思ってしまうほどだ。
「ところでアッくん、今晩はカレーかい?」
「違いますよ。カレーは昨日も食ったじゃないスか」
「でもアッくんのカレーおいしいんだもん。毎日カレーでもいいくらいねえ」
スマイルがカレーをリクエストするのもいつものことである。
料理を褒めてもらえるのは素直にありがたくて、アッシュは照れたように両耳を下げて笑った。
「そういってもらえると作り甲斐があるっス。けどさすがに毎日じゃ、スマは飽きなくてもユーリが飽きちゃうでしょ」
ユーリは今は自室にこもって作曲中のはずだが、そろそろ行き詰っている頃だろう。
後で何か差し入れをもって行ってやろうとアッシュは思う。
…窓から逃亡していなければいいのだが。
「ほんとにもー、手掛かるな…」
「あれアッくんどしたの?ため息つくとシアワセが逃げちゃうんだヨー?」
「少しくらい逃がしてやったほうがいいかも知れないっスよ」
からかい口調で言うスマイルにアッシュは苦笑した。
「今じゃ幸せ過ぎるくらいっス」
10:27 2006/02/15
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||