1 1 t h t i t l e : 「 ラ ッ キ ー ♪ 」
「ラッキー♪」
ヒカルは得意げに駄菓子の空袋を見せてきた。
いかにも駄菓子らしいチープなナイロン袋の内側に小さく「大当たり!」の文字が見える。
「当たるとどうなるんだ」
「もういっこ貰えんの」
にこにこと機嫌よく言って、ヒカルはさっそく駄菓子屋の老婦人に声を掛けている。
戻ってきたヒカルの手には、先ほどと同じ菓子が今度は二つ握られていた。
そのうちの一方をアキラへと手渡す。
「オマケだってさ。お前にやるよ」
「いいのか、キミが貰ったものなのに」
「オレがやるっつってんだからいーの」
「…そうか、有難う」
素直に受け取って微笑む。
ヒカルはとても楽しそうに笑っている。
駄菓子を食べたことがない、もちろん駄菓子屋になど行ったこともない。
アキラが何の気もなくそう言うとヒカルに大袈裟なくらい驚かれた。
そして次の瞬間にはもう、強引にここへ連れて来られていたりする。
そのときは彼のあまりの頑固さに閉口したものだったが、やはり来てよかった。
「オレあの種類当たったの初めてなんだぜ。しかも二個も貰っちゃったし!」
碁に関することを除けば、ヒカルは実に普通の学生だ。
今日はツイてる、といつものように屈託なく笑う。
アキラにはそれが眩しく思えた。
「きっとお前と来たからだよな」
たったそれだけのことでまた来ようと思ってしまう自分は、本当はとても単純かも知れない。
20:33 2006/02/05
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