1 0 t h t i t l e : 「 悪 い け ど 信 じ ら れ な い 」
「悪いけど信じられない」
スギは真面目顔で手の平を見せた。
お断りします、のポーズだ。
「そりゃないよスギくん」
お断りされた側であるレオはなんだか間抜に抗議の声を出した。
スギはお断りポーズのまま話し続ける。
レオの抗議なんてきっと彼の耳には届いていないのだろう。
「いまだかつて君が、無償で僕の利になるようなことをしてくれようとしたことがあっただろうか、いやない」
意味もなく反語表現を駆使しつつ、スギは芝居がかった口調でさらに続ける。
「たしかにそれは望んでも手に入らないような貴重な音源で、僕は咽から手が出るほど欲しいさ。
けれど君はそれをタダで譲ってくれるようなお人よし君でないことも、僕はとてもよおく知っているつもりだ。
いったい何が目的なんだいレオ君。地位かい? 金かい? 名誉かい? それとも僕かい?」
「・・・・・・あのねぇスギ」
溜息もつけないような状況になってようやくレオも口を開くことができた。
「前から欲しがってたものだからテンション上がるのは仕方ないけどね、君がそんなに信じられないって言うなら、この話はなかったことに」
とたんにスギは見たこともないような爽やかな笑顔になって、お断りポーズの手をそのままレオに向かって差し出す。
それは友好の握手を求めるポーズだ。
「君のような親友を持てて僕は本当に幸せ者だよ」
レオは無二の親友の図々しさを改めてしっかりと痛感するのだった。
16:37 2006/02/02
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