8 t h t i t l e : 「 ま さ か と は 思 う け ど 」
「まさかとは思うけど」
いつものように腹の立つ笑顔で向かうロイにエドワードもぎこちなく笑いつつ問う。
「お前、大佐じゃないな?」
ロイは笑顔を崩さない。
「何を言っているんだね鋼の、私が私以外のなんに見え」
「いー加減にしねーとたたっ斬るぞ」
錬成反応の閃光と共にエドワードの右腕が刃物に変わる。
「やれやれ参ったね」
ロイは降参というふうに肩をすくめてみせた。
その頭の先から不自然に変化が生じる。
変化が完全に終わったとき、そこに立っていたのはロイとは全く別の人物だった。
「よくわかったねー。さっすがおチビさん」
浮かべるのは一見人懐こそうに見える笑顔だが、その実 常に人を嘲るような陰湿さも含む。
嫌な奴に出くわした。
エドワードは舌打ちをした。
「オレに何の用だ」
エンヴィーは大袈裟な素振りで溜め息をつく。
「ヤだなぁ会いたかったから会いに来たんだよ」
「じゃもう用事は済んだな とっとと失せろ」
一瞬だけきょとんとしたあと、エンヴィーは先刻とは全く違う種の溜息を短くついた。
「 やっぱわかっちゃうんだね」
あまりに濃い、血の 臭い。
「今夜は何人だ?」
皮肉を込めて吐き捨てるようにそう問うと、知ってどうするのと小さく笑われる。
「知らなくたっていいんだよ」
だから嫌なんだ。
エドワードはもう一度舌打ちしたい気分だった。
「ごめん」
2:26 2006/01/31
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